後腹膜鏡補助下尿管結石摘出術――腹膜腔を開かずに、尿管へ直接アプローチする


尿管結石の怖さ

尿管結石は、腎臓でつくられた結石が尿管内で詰まる病気です。完全に閉塞してしまうと尿の流れが止まり、腎機能が急速に低下します。特に猫では片側の腎臓がすでに障害されているケースも多く、残った一方の腎臓を守るためにも、速やかな治療が求められます。

腹腔鏡とも違う、もうひとつの世界

尿管結石に対する外科治療として、これまでは「腹腔鏡」や「開腹手術」が選択肢の中心でした。しかし近年、新たなアプローチとして注目されているのが「後腹膜鏡」による手術です。

後腹膜鏡手術とは、腹腔(腹膜腔)の中を通らずに、体の背側から後腹膜腔へ直接アクセスする方法です。背中側の皮膚にわずか数ミリの小さな切開を加えるだけで、カメラを後腹膜腔へ挿入し、腎臓・尿管を直視しながら手術を行います。

腹腔鏡手術では、腹腔内に気腹を行い、胃・腸・肝臓・膵臓などの臓器が存在する空間を経由して目的の臓器へアプローチします。一方、後腹膜鏡手術では腹膜腔そのものに触れることがないため、腹腔内の臓器を傷つけるリスクがありません。尿管は解剖学的に後腹膜臓器であり、後腹膜鏡との相性は非常に優れています。

後腹膜鏡下尿管結石摘出術の特長

後腹膜鏡手術最大の利点は、腹膜腔臓器を一切触らずに手術を完結できる点にあります。腹腔内への影響を最小限に抑えることができるため、術後の消化器症状や腸管への影響が少なく、回復を早める効果が期待できます。

手術は体の背側に3〜5mmの小さな切開を2〜3ヶ所開けるだけで実施可能です。結石を取り除いた後は、尿管を精細な縫合糸で縫合し、尿の流れを回復させます。

犬・猫ともに適応可能

この手術は犬・猫ともに適応となります。特に猫は尿管の直径が非常に細く(1mm以下のことも珍しくありません)、手術の精緻さが強く求められます。後腹膜鏡による拡大された鮮明な視野は、このような繊細な縫合を可能にする大きな助けになります。

尿管結石と診断されたお子さんをお持ちの飼い主様、また手術依頼をお考えの獣医師の先生方は、ぜひお気軽にご相談ください。腹腔鏡・後腹膜鏡のいずれのアプローチが最も適しているかを、症例ごとに丁寧に検討し、最善の治療法をご提案いたします。