犬猫の腹腔鏡・胸腔鏡手術を専門とする獣医師・博士 朴永泰

ごあいさつ

獣医師・博士

朴永泰

  • Ve.C.動物病院グループ – 総院長
  • 自由が丘動物医療センター – 院長

資格

  • 博士(獣医学)
  • ESVPS公認小動物外科学認定医

HPをご覧いただきありがとうございます。
私は学生時代から今日に至るまで、一貫して動物たちのための内視鏡外科手術を探求し続けてきました。腹腔鏡や胸腔鏡と呼ばれるこの手術は、生体への負担を最小限に抑え、繊細かつ確実な治療を可能にする、まさに夢のような方法です。実際に、手術を受けた動物が日帰りで元気に退院できることも珍しくありません。一方で、内視鏡外科手術はすべての症例に適応できるわけではなく、適切な判断と十分な経験をもつ執刀医の技量が結果を大きく左右します。
私は、自分の持てるすべてを、獣医師の先生方、飼い主の皆様、そして病気や手術の痛みに苦しむ動物たちのために捧げたい、その思いから、このHPを立ち上げました。

全国の飼い主様へ

ぜひ内視鏡手術について下記の内容をご覧いただき、ご不安やご質問があればお気軽にご相談ください。

獣医師の皆様へ

出張手術、指導、教育セミナー、手術動画の配信、さらには内視鏡手術器械の導入に関するご相談など、多岐にわたってお力になれれば幸いです。ぜひ下記のご案内をご覧ください。

どうぞお気軽にご連絡ください。

私にできること

執刀医として出張手術をいたします

定期、不定期合わせて複数の動物病院で内視鏡手術を行っています。
飼い主の皆様は以下をお読みいただき、手術をご依頼ください。

獣医師の皆様、以下の項目をお読みいただき、ご要望をお聞かせください。

執刀する手術内容について

手術の執刀依頼をこちらから受け付けております。

現在ご担当されている症例が内視鏡手術の適応となるかどうか、また実施にあたり必要な器械や準備についても、併せてご相談いただけます。
症例に応じた最適な方法をご提案し、安心して手術に臨めるようサポートいたします。

腹腔鏡手術、胸腔鏡手術は特殊な麻酔環境を必要とします。

内視鏡手術に特化した麻酔の依頼、指導をご希望になられたい方はこちらをご参照ください。

腹腔鏡、胸腔鏡手術支援

本サービスは、すでに腹腔鏡・胸腔鏡手術を導入し、実際に執刀されている病院様・獣医師の方を対象としております。

ご要望に応じて、以下のようなサポートが可能です。

  • 実際の手術執刀や、手術室環境に関する直接的なご指導
  • 手術映像をリアルタイムで遠隔共有いただき、手術をともに進めるサポート
  • 実施済みの手術動画を用いた、オンラインでの振り返り検討

臨床現場に即した実践的なサポートを通じて、さらなる技術向上をお手伝いいたします。

教育指導

腹腔鏡手術や胸腔鏡手術の知識が全くない方でも、安心してゼロから学び始めていただけます。

学習スタイルに合わせて、さまざまな形での教育指導をご用意しております。

  • オンラインセミナーによる講義形式の学習
  • 完全マンツーマンによるオンライン個別指導サービス
  • 実際の手術動画・解説動画の閲覧、最新手術動画の継続配信

これらを通じて、基礎から応用まで段階的に学んでいただけます。
また、皆さまのご意見・ご要望も随時お伺いし、より実践的で役立つプログラムを提供してまいります。

腹腔鏡手術や胸腔鏡手術について全く分からない方でもゼロから始めることができます。
ご意見、ご要望についてお聞かせください。

内視鏡外科(腹腔鏡、胸腔鏡手術)とは?

大切な家族のために選べる、体にやさしい治療法です。

「高齢なのに、うちの子は手術に耐えられるのかしら…」
「できるだけ痛みを少なく、早く退院させてあげたい」
「経験豊富な専門の先生に手術をお願いしたい」

ご家族の手術が決まったとき、飼い主様が不安に思われるのはごく自然なことです。

内視鏡外科って、どんな手術?

従来の開腹手術の大きな傷と、内視鏡外科の小さな傷を比較する分かりやすいイラスト
従来の開腹手術の大きな傷と、内視鏡外科の小さな傷を比較する分かりやすいイラスト

これまでの外科手術は、お腹や胸を大きく切り開く「開腹手術」や「開胸手術」が一般的でした。

一方で、内視鏡外科手術は、お腹や胸にわずか3〜5mmほどの小さな穴を数ヶ所あけ、そこから「硬性鏡」と呼ばれる細長いカメラと、専用の繊細な手術器具を挿入して行います。

獣医師は、大きなモニターに映し出された鮮明な映像を見ながら操作を行うため、体の奥深くでも細部まで確認しながら、安全で丁寧な手術が可能になります。

内視鏡外科の「3つのやさしさ」

1.痛みが少なく、回復が早い

 内視鏡手術は傷口がとても小さく、内臓を外気にさらすこともありません。そのため手術の痛みを大幅に軽減でき、動物たちは術後に強い痛みに苦しむことが少なくなります。回復も非常に早く、最短で日帰り退院が可能な場合もあります。
――動物の体にやさしい手術です。

2.良く見えるから、確実な手術ができる

最新の映像技術により、今では4Kの高精細な映像でお腹の中を確認できます。肉眼では見分けが難しい細かな血管や神経、組織の違いも鮮明に認識できるため、正確で繊細な手術が可能となります。
――術者にやさしい手術です。

3.早く家に帰れて、ご家族も安心

 動物にとって一番安心できる場所は、ご家族と過ごす「家」です。内視鏡手術によって早期退院が可能となり、動物はご家族のもとへ一日でも早く帰ることができます。元気な姿に触れることで、ご家族の不安も大きく和らぎます。
――飼い主様にやさしい手術です。

どんな手術で使われるの?

  • 女の子の避妊手術(卵巣摘出、卵巣子宮摘出)
  • お腹の中に残ってしまった精巣(潜在精巣)の切除
  • 胆嚢(たんのう)や副腎(ふくじん)の切除
  • 肝臓・腎臓・膵臓などの組織を採取して行う検査(生検)
  • 膀胱結石の摘出
  • 肺がん、乳び胸、門脈シャントなどの外科治療
  • その他様々な手術に適応

ご家族にとって、一番良い選択を

動物たちは、かけがえのない大切なご家族です。
その子にとって何が最善の方法なのかを、飼い主様と一緒にじっくり考え、最も良い選択をご提案していきたいと考えています。

「内視鏡外科についてもっと知りたい」
「うちの子の場合はどうなんだろう?」

そう思われた方は、どうぞお気軽にご相談ください。

実際の内視鏡外科手術の紹介

胸腔内・腹腔内におけるあらゆる手術に対し、内視鏡でのアプローチが可能かどうかを慎重に検討いたします。術前診断を踏まえ、患者である動物たち一頭一頭に寄り添い、最適な診療・治療方法をご提案いたします。

主な腹腔鏡手術

腹腔鏡下卵巣摘出、腹腔鏡補助下卵巣子宮摘出

犬や猫に対して最も多く行われている腹腔鏡手術です。
将来の病気予防や不妊を目的として実施されるほか、卵巣腫瘍・子宮水腫・子宮蓄膿症などの病気にも対応可能です。

一般的にはお腹に3つの穴をあけて行う方法が主流ですが、私の手術では 3〜5mmの小さな切開を2ヶ所のみ で行うことができ、動物への負担をさらに軽減しています。

手術時間は30分以内、日帰りでの手術が可能です。

腹腔鏡下(補助下)停留精巣摘出

男の子に起こる病気のひとつに、本来は陰嚢に降りるはずの精巣が、お腹の中にとどまってしまう「停留精巣(潜在精巣)」があります。

腹腔内に停留した精巣を放置すると、将来腫瘍化するリスクが高くなり、またこの病気は遺伝的に受け継がれる可能性があるため、精巣の摘出が望ましいとされています。腹腔鏡手術は片側・両側いずれの場合も適応可能で、すでに腫瘍化しているケースにも対応できます。
3〜5mmの小さな切開を2〜3ヶ所あけるだけで手術が可能で、予防的な摘出であれば日帰り手術も可能です。

腹腔内組織生検

病気の原因を調べるために、臓器の一部を採取して検査することを「生検」と呼びます。
これは診断を目的とした手術であり、腹腔鏡を用いることで 最小限の切開 で実施することができます。

もっとも多いのは肝臓に対する生検ですが、膵臓・腎臓・リンパ節・胃・腸など、腹腔内のあらゆる臓器に対して行うことが可能です。多くの場合、日帰りでの手術が可能 です。

膀胱結石摘出

膀胱内の結石を取り除くために行う手術です。
この手術は内視鏡外科の利点が最も発揮される手術のひとつとして知られています。

傷口が小さいことはもちろん、膀胱内の結石を確実に取り残さない ことが最大の強みです。従来は腹腔鏡補助下や小開腹下など、さまざまな術式が報告されてきましたが、私たちは新たに 吊り上げ式腹腔鏡補助下膀胱切開術 を開発し、より早く・小さく・確実に手術を行えることを学会で発表しています。

これまでにすでに 100例以上の実績 があり、そのほとんどが日帰りで手術可能です。
手術は8〜15mmの小さな切開で行うことができ、犬・猫ともに適応となります。

ぜひお気軽にご相談ください。

腹腔鏡下胃固定術

主に大型犬に適応となる手術で、胃拡張・胃捻転症候群(GDV)と呼ばれる、発症すると致死率の高い緊急疾患を予防する目的で行われます。
この病気の正確な発症要因はまだ解明されていませんが、以下の犬種で特に発生しやすいことが知られています。

  • ゴールデン・リトリーバー
  • グレート・デーン(最も高リスクとされる)
  • ジャーマン・シェパード
  • スタンダード・プードル
  • ドーベルマン
  • アイリッシュ・セッター
  • ワイマラナー
  • セント・バーナード
  • ボクサー
  • ニューファンドランド
  • バーニーズ・マウンテンドッグ
  • ロットワイラー
  • 秋田犬
  • ラブラドール・リトリーバー

これらの犬種と暮らす飼い主様には、特に受けていただきたい手術のひとつです。

手術は 5〜10mmの小さな切開を3ヶ所あけるだけで実施可能で、ほとんどの場合、日帰りでの手術が可能です。不妊手術や去勢手術と同時に行うケースも多くあります。

腹腔鏡下胃固定術には、完全腹腔鏡下で行う方法と、腹腔鏡補助下で行う方法があり、完全腹腔鏡下の方が技術的に難易度が高いとされていますが、どうぞご安心ください。この手術によって救える命があります。
ぜひ知っていただきたい大切な予防手術です。

腹腔鏡下胆嚢摘出、胆嚢穿刺

犬猫の胆嚢疾患に対して適応となる手術です。

胆嚢穿刺は、胆管における細菌感染が疑われる場合に行います。血液検査で肝臓・胆道系の酵素値が高値を示し、画像診断で胆石や胆嚢炎などの異常が確認された症例で実施されます。胆汁を採取し、その組成や細菌感染の有無を調べることで、最も適切な抗生物質を選択することができます。

胆嚢摘出は主に犬で適応され、胆石症・胆嚢炎・胆嚢粘液嚢腫の治療のために行われます。特に高齢の小型犬は胆嚢疾患にかかりやすく、様子を見すぎることで胆嚢破裂を引き起こし、時に命に関わることがあります。

腹腔鏡手術では、そのような深刻な状態になる前に介入することで、5mmの小さな傷4ヶ所から胆嚢を摘出することが可能です。胆嚢は解剖学的な個体差が大きく、また病態によっても手術の難易度が変わるため、内視鏡外科に精通した獣医師が執刀すべき手術です。動物の状態によりますが、多くは日帰りまたは1泊入院での手術が可能です。

腹腔鏡下副腎摘出

犬や猫の副腎腫瘍に対して適応となる手術です。

副腎は「後腹膜臓器」と呼ばれる、体の奥深くに位置する小さな臓器です。腹腔鏡下副腎摘出術は、近年世界的にも研究が盛んに行われている手術のひとつで、腹腔鏡手術との相性が非常に良いとされています。手術は通常、5mmの小さな切開を3〜4ヶ所あけるだけで実施可能です。近年では、さらに特殊な技術である「後腹膜鏡」による手術も報告されています。

副腎腫瘍には良性と悪性があり、特に副腎皮質の腫瘍ではホルモン異常によってクッシング症候群が引き起こされます。放置すると体中のさまざまな臓器に障害が及ぶため、積極的な摘出が望まれます。猫でも犬と同様にホルモン異常が起こるため、注意が必要です。

また、副腎には「皮質」と「髄質」があり、髄質が腫瘍化すると褐色細胞腫と呼ばれる腫瘍となり、過剰なアドレナリン分泌によって手術中の血圧などに大きな影響を及ぼします。そのため、最小侵襲で的確な手術を行うことに加え、適切な麻酔管理も極めて重要となります。さらに、術後管理も非常に大切です。多くの場合、一泊入院していただき、翌日に術後の治療方針をご相談させていただきます。

腹腔鏡下門脈体循環短絡血管結紮(門脈シャント)

門脈シャントは、犬や猫に先天的に発生する疾患です。
生まれつき肝臓へ向かう門脈と静脈系の間に、本来存在しない「短絡血管(シャント)」が形成されてしまいます。

短絡血管の位置によって、手術時の体位や切開部位は大きく異なります。代表的なシャント部位としては、横隔静脈シャント・後大静脈シャント・奇静脈シャントなどが知られています。

手術は、腹腔鏡・胸腔鏡を用いて 5mmの小さな切開を3ヶ所と、10〜15mmほどの切開を1ヶ所あけ、短絡血管を縫合糸で結紮することで行います。

私たちの方法では、手術中に門脈圧をリアルタイムで測定しながら、可能であれば短絡血管を完全に結紮します。一方で、結紮によって門脈圧が過剰に上昇してしまう症例では、まず部分結紮を行い、2回の手術に分けて段階的に完全遮断を目指すこともあります。

門脈シャント手術では、術後管理が非常に重要です。手術後3日以内に重篤な神経症状(発作など)が起きる可能性があるため、傷口が小さく動物が元気に見える場合でも、入院期間については慎重にご相談させていただいております。

腹腔鏡下腎臓尿管摘出、腹腔鏡補助下尿管移植、尿管切開、尿管膀胱新吻合

腎臓の腫瘍や水腎症、尿管結石などの尿管疾患により、腎臓の摘出や尿管の切開・移植が必要となる症例に対して行う手術です。

通常は 5mmの小さな切開を3ヶ所あけるだけで腹腔鏡下に実施することが可能です。ただし、腎臓を腹腔から摘出したり、髪の毛よりも細い糸で尿管を縫合したり膀胱に移植する必要がある場合には症例によっては切開部を拡大する場合もあります。

尿管移植、尿管膀胱新吻合は、尿管結石による閉塞、あるいは膀胱・尿道・前立腺腫瘍などにより尿管開口部が閉塞した際に、治療として行われます。特に高齢の動物や体力が低下している動物に対しては、体への負担を最小限に抑えることができる内視鏡による低侵襲手術が望ましい選択肢となります。

腹腔鏡下リンパ節切除

腹腔内には多くのリンパ節が存在し、その多くは大切な血管の傍に位置しているため、慎重な切除が求められます。

特に腰下リンパ節群は、腫瘍の転移によって腫脹することがあり、がんのステージングを目的とした切除や、腫脹によって尿道や結腸が圧迫され、日常生活に支障をきたす場合に切除が勧められます。

そのほか、一部の腸間膜リンパ節肝門リンパ節脾リンパ節など、解剖学的に奥深い部位にあるリンパ節に対しても、腫瘍のステージングや治療を目的として切除が行われます。手術は通常、5mmの小さな切開を3ヶ所、場合によっては4ヶ所あけることで実施可能です。

腹腔鏡下肝葉切除術

腹腔鏡を用いて肝臓を切除することが可能です。
人医療ではすでに多くのデータが蓄積されていますが、犬や猫における腹腔鏡下肝葉切除の報告はまだ限られています。

肝臓切除は開腹手術でも難易度が高く、大出血を引き起こす危険を伴うため、その適応と実施には慎重な判断が必要です。従来の開腹手術では大きな切開を必要としますが、腹腔鏡手術であれば動物への負担を最小限に抑えることができます。

適応となるのは、主に孤立した腫瘍です。犬や猫の肝臓腫瘍は増大傾向を示すため、あまりにも大きな腫瘍は腹腔鏡手術の対象外となります。適応の可否は、腫瘍のサイズや位置によって大きく左右されます。そのため、手術に臨む際には、執刀医と十分に相談し、しっかりと準備を整えることが大切です。

腹腔鏡補助下胃切開、腸切開、胃ろうチューブ、膀胱瘻造設術、人工肛門造設術

消化管内視鏡では摘出が困難な異物に対する胃切開や胃ろうチューブの設置、さらに小腸切開・小腸切除、腸ろうチューブや膀胱瘻、人工肛門の造設などにおいて、腹腔鏡を効果的に活用します。

これらの手術では、腸内容が腹腔内に漏れないよう特に配慮が必要です。そのため、完全な腹腔鏡下にこだわらず、小開腹と腹腔鏡を組み合わせた方法が一般的に行われています。特に胃ろうチューブ、膀胱瘻造設に関しては、動物医療ではまだ珍しい「バルーン型胃ろうカテーテル」を設置することが可能です。これは従来のPEGチューブと比べて、動物の日常動作の妨げになりにくく、交換も容易であるため、腹腔鏡手術の大きな利点を生かした処置といえます。

腹腔鏡下胃腫瘤切除(噴門、胃体部、幽門)

胃の入口にあたる「噴門部」の周囲に腫瘍が発生することがあります。多くは良性ですが、中には大きく成長し、嘔吐や食欲不振といった症状を引き起こすケースもあります。

噴門部は解剖学的に肋骨に囲まれた深い位置にあるため、検査や外科的アプローチが難しい部位です。その一方で、健康診断などで偶然発見されることも少なくありません。

発見された場合には、経過観察にとどめず、早期に腹腔鏡を用いて切除を行うことで良好な結果につながる可能性があります。

腹腔鏡下後腹膜腫瘍切除・後腹膜鏡下乳び槽切開

後腹膜とは、お腹の中でも背中側に位置する空間を指します。胃や腸、肝臓、胆嚢、膵臓などの「腹膜腔臓器」と比べ、腹膜を一枚隔ててその背側に存在しています。

この後腹膜には、副腎・腎臓・尿管・リンパ節・乳び槽・大血管といった重要な臓器が含まれます。ここに腫瘍や病変が発生し、外科手術が必要となる場合、従来の開腹手術では深部に到達するために大きな切開が必要となり、患者への負担が大きくなります。

一方、腹腔鏡を用いたアプローチでは、必要最小限の切開で深部にアクセスすることが可能です。後腹膜は腹腔鏡手術と非常に相性の良い解剖学的部位であり、低侵襲かつ精緻な手術を実現できます。

腹腔鏡下食道裂孔ヘルニア整復

食道裂孔とは、横隔膜にある「食道と胃をつなぐトンネル」のような穴です。
この食道裂孔が緩んだり広がったりすることで、胃の一部が胸腔側へ滑り込んでしまう状態を食道裂孔ヘルニアと呼びます。

短頭種犬では、上気道の呼吸困難によって強い圧力で呼吸を繰り返すことが原因となる場合があります。そのほかにも、外傷や原因不明で発生するケースもしばしば見られます。

診断は、胃が胸腔内へ入り込んでいる様子をレントゲン検査で確認することで可能です。

食道裂孔は解剖学的に横隔膜の深部に位置しており、従来の開腹手術では大きな切開を必要とします。しかし、腹腔鏡手術を用いることで、より低侵襲に整復が可能となり、動物への負担を軽減することができます。

腹腔鏡下鼠径ヘルニア整復術

鼠径ヘルニアは、股の付け根にある穴から腹腔内の臓器や脂肪が飛び出す状態です。無症状のこともありますが、陥頓すると血流障害を起こし壊死の危険があります。

治療は外科的整復で、症例によっては腹腔鏡で低侵襲に行うことも可能です。ヘルニアの状態やリスクを評価し、腹腔鏡か開腹か最適な方法を選択します。

腹腔鏡下結腸固定術

直腸脱や会陰ヘルニアでは、結腸が飛び出さないように腹腔内の筋肉へ固定する手術を行います。これを腹腔鏡下で低侵襲に実施することが可能です。特に会陰ヘルニアの整復手術と同時に行われることが多く、再発防止にも有効です。

腹腔鏡下骨盤内臓器手術(前立腺切除、スウェンソンズプルスルー直腸切除)

膀胱・前立腺・尿道・結腸・直腸に対して、腹腔鏡下での手術が可能です。

骨盤腔は解剖学的に強固な骨盤に囲まれた空間であり、開腹手術では視野の確保が難しく、時には骨盤を切開して手術を行わなければなりません。しかし、骨を切ることは動物に大きな手術ダメージを与えてしまいます。

一方で腹腔鏡手術では、細長いカメラを用いて骨盤腔内に直接アプローチできるため、骨盤を切らずに手術を行うことが可能です。これにより、体への負担を大幅に軽減できます。

ただし、動物における腹腔鏡下骨盤腔内手術は、まだ世界的にも研究が進んでいない分野であり、適応の判断には慎重さが求められます

これまでに前立腺疾患や尿道・直腸疾患で実績があり、実際に開腹手術との差を明確に感じられる低侵襲手術です。
骨盤を切開する手術と比べ、明らかに体への負担を減らすことができるため、ぜひ一度ご相談ください。

腹腔鏡補助下結腸亜全摘切除

特発性巨大結腸症は、猫に重度の便秘症状を引き起こす病気です。うまく排便できないことで、脱水・嘔吐・衰弱といった深刻な症状に進行してしまいます。

近年は内科療法も充実しており、必ずしも外科が第一選択ではありません。しかし、日々の投薬が難しい子や療法食を食べない子、また内科治療に反応しない症例では、依然として外科手術が必要となる場合があります。

外科治療としては、拡張して運動性を失った結腸を亜全摘する方法が知られています。私たちは、この手術を低侵襲に腹腔鏡下で行う方法を開発し、学会でも発表してまいりました。腹腔鏡下で実施することで、従来法に比べて圧倒的に小さなダメージでの手術が可能となります。

主な胸腔鏡手術

胸腔鏡下(補助下)肺葉切除

胸腔鏡を用いることで、肺葉切除や肺葉部分切除を行うことが可能です。
従来の開胸術では肋間の筋肉を大きく切開するため、術後に強い疼痛を伴いやすく、その痛みにより呼吸が不安定になることがあります。胸腔鏡を使用することで、麻酔からの覚醒後もより良好な呼吸管理が期待できます。

完全胸腔鏡下での肺葉切除には、ステープラーという特殊な機器の使用や胸腔内での結紮操作など、高度な技術が必要です。一方で、胸腔鏡補助下手術では小開胸を加え、その創部から肺を体外へ一時的に牽引しながら切除を行います。

適応としては、肺腫瘍の治療をはじめ、持続的気胸やその他の肺病変が挙げられます。術式の選択には、動物の体格や体重、胸腔の大きさ、さらに病院の麻酔設備などが重要な要素となります。 本手術は通常3〜4か所の創部で実施可能です。

胸腔鏡下心膜切除

胸腔鏡下心膜切除は、心臓を包んでいる心膜を胸腔鏡下で切除する低侵襲手術です。

この手術の主な適応は、心タンポナーデと呼ばれる緊急疾患です。心膜腔に液体が貯留することで心臓が十分に拡張できなくなり、閉塞性ショックを引き起こす危険があります。心膜を切除することで、心臓の圧迫を解除し命を救う治療となります。

さらに、心膜そのものが中皮腫などの悪性腫瘍に罹患している可能性もあり、この手術は心膜の組織生検としての意義も持ちます。

また、犬や猫でみられる乳び胸という難治性疾患に対しても、補助的な外科治療として心膜切除が行われます。

胸腔鏡手術では、3〜5mm程度の小さな創を3か所ほど作るだけで手術が可能です。開胸を必要としないため、従来の開胸術に比べて体への負担が軽く、術後の疼痛や合併症のリスクを大幅に減らすことができます。このように、胸腔鏡下心膜切除は開胸術と比較して利点の大きい、安全性と低侵襲性に優れた手術といえます。

胸腔鏡下胸管結紮

乳び胸の治療のために行う手術です。犬や猫では突然発症することがあり、特発性乳び胸(原因不明で起こるもの)と、二次性乳び胸(基礎疾患に伴って起こるもの)に分類されます。胸腔鏡手術の適応となるのは、主に原因不明で発症する特発性乳び胸です。

この病気では、胸腔内に乳び(脂肪を多く含むリンパ液)が貯留することで肺が十分に膨らまず、重度の呼吸困難を引き起こします。さらに、乳びが長期間溜まり続けると、胸膜がその刺激にさらされて炎症を起こし、線維性胸膜炎へと進行してしまいます。こうなると肺の動きはさらに制限され、呼吸困難から命を落とす危険もあります。

根本的な治療としては、胸管(お腹から乳びを胸へ運ぶリンパ管)を胸腔内で結紮する手術を行います。注目すべき点として、この胸管結紮は開胸手術よりも胸腔鏡下で行った方が成績が良好であることが明らかになっています。

さらに、治療成績を高めるために心膜切除腹部の乳び層切開といった補助的処置も、胸腔鏡・腹腔鏡下に実施することが可能です。乳び胸は難治性疾患のひとつですが、胸腔鏡手術が非常に適応となる病気です。諦めることなく、積極的に検討・実施されるべき外科治療といえます。

胸腔鏡下前縦隔腫物切除

胸腔内の前縦隔と呼ばれる部位には、リンパ節や胸腺が存在しています。これらの組織は、腫瘍性疾患によって腫大・腫瘍化することがあります。

胸腔鏡を用いることで、この前縦隔リンパ節や胸腺腫瘍にアプローチし、切除を行うことが可能です。適応の判断には、術前の画像診断が極めて重要であり、腫瘍の大きさや位置、周囲組織との関係を慎重に評価したうえで手術が検討されます。

手術は5mm程度の小さな創を3〜4か所作成するだけで行うことができ、従来の開胸術に比べて動物への負担を大幅に軽減できます。

胸腔鏡下胸腔内探査、組織生検

原因不明の胸水が貯留する症例に対して、胸腔内を胸腔鏡で探査し、必要に応じて縦隔や胸壁の胸膜などから組織生検を行います。

胸腔全体を観察するために従来の開胸術を行う場合、胸骨を大きく切開しなければならず、動物にとって非常に大きな手術侵襲を伴います。一方で、胸腔鏡を用いれば5mm程度の小さな創を3〜5か所作成するだけで胸腔内を広く観察でき、組織生検を実施することが可能です。低侵襲でありながら診断に必要な情報を得られる、安全性と有用性の高い手技といえます。

無料動画

実際の手術動画

2025年10月9日

左副腎腫瘍摘出

2025年10月9日

胆のう摘出、胆嚢炎

2025年10月9日

門脈シャント

2025年10月9日

乳び胸

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胆のう摘出、粘液嚢腫